うらおもて人生録

うらおもて人生録 (新潮文庫)

色川 武大 / 新潮社



博打打ちからスタートした著者が長い人生の間に悟った、人生論について語られている。運の総量は五分五分であり、長い勝負を決するのは実力やエラーである。しかし短期で見た場合、運は実力の差を埋めて余りあるため、全勝は不可能、したがって九勝六敗を選んでいけ、というような論旨。

他者を相手にした戦いでは自分と相手、自分自身との戦いでは弱みと強み、これらの勝負で九勝させてもらいつつ、六敗を選んでいくことが継続できる生き方なのだ。さらに一般的に言うと、表と裏の関係にある二律背反を意識的にコントロールすることが、長い人生で社会に生かしてもらうためのセオリーなのだ。

東京は糸が張り詰めたように、何事も勝つことばかりに意識が行ってしまいがちだ。六敗を甘んじて生きられるように、私も大らかな人に成長したい。

著者の文章の書き方も分かりやすくてよかったが、解説の人の文章がさらに美しかった。西部邁という人らしい。この人の本も読んでみたい。
人生論はいまどきの流行ではない。いわゆる「知」とかが人生や体験をこのうえなく侮蔑し、人生なしの芸術、体験なしの知識が言葉のショー・ウィンドウに並んでいる。今の時代の優等生とは、このガラスのなかの陳列競争の勝者ということであり、これが時代の本線である。

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by shohey0229 | 2010-03-30 01:37 | 読書